眠りが怖いと感じているあなたへ
夜、ベッドに入るのが怖い。目を閉じると、またあの恐ろしい夢を見てしまうのではないか。そんな不安を抱えながら、毎晩眠りにつくのは、本当につらいことですよね。
朝起きた時、汗びっしょりで心臓がバクバクしている。夢の内容があまりにもリアルで、現実との境目がわからなくなってしまう。そんな経験をしているあなたは、決してひとりではありません。
悪夢は誰にでも起こりうるものですが、それが繰り返し続き、日常生活に影響を及ぼすようになると「悪夢障害」という状態かもしれません。
たとえば、ある30代の女性は、毎晩のように追いかけられる夢を見て、夜中に何度も目が覚めてしまい、日中も疲れが取れず仕事に集中できなくなっていました。
また、20代の男性は、事故の夢を繰り返し見るようになり、眠ること自体に恐怖を感じ始め、不眠症にまで発展してしまったといいます。
こうした悪夢による苦しみは、周囲の人にはなかなか理解されにくいものです。「ただの夢でしょう」と言われてしまうこともあるかもしれません。でも、あなたが感じている恐怖や不安は、とても現実的で深刻なものです。
夢の中での体験が、目覚めた後も心と体に強い影響を残し、日々の生活の質を大きく下げてしまうのですから。
悪夢障害とはどのようなものか
悪夢障害は、単に「怖い夢を見る」というだけではありません。それは、繰り返し起こる強烈な悪夢によって、睡眠が妨げられ、日中の生活にも支障が出る状態を指します。
たとえば、週に何度も悪夢で目が覚め、その後なかなか眠れなくなってしまう。朝起きても疲れが取れず、仕事や学校でのパフォーマンスが落ちる。人と会うのも億劫になり、気分が沈みがちになる。
こうした変化が現れている場合、悪夢障害の可能性を考えてみる必要があります。
悪夢の内容は人それぞれですが、多くの場合、命の危険を感じるような場面、大切な人を失う場面、追いかけられたり攻撃されたりする場面などが繰り返し現れます。
40代の男性の例では、高いところから落ちる夢を毎晩のように見て、実際に体が硬直し、朝起きると全身が痛むほど緊張していたそうです。
また、ある女性は、災害に遭遇する夢を繰り返し見るようになり、日中も不安が消えず、外出することさえ怖くなってしまいました。
大切なのは、こうした症状があなたの責任ではないということです。悪夢障害は、脳の睡眠メカニズムや感情処理の仕組みに関わる問題であり、適切な対処によって改善が可能なものなのです。
あなたの症状をチェックしてみましょう
ここで、ご自身の状態を確認してみましょう。以下のような症状が当てはまるか、優しく自分に問いかけてみてください。
週に1回以上、恐ろしい内容の夢で目が覚めることがありますか。目覚めた後、夢の内容を鮮明に思い出せて、不安や恐怖が続きますか。悪夢のせいで睡眠が妨げられ、日中に眠気や疲労を感じていますか。悪夢を見ることへの不安から、眠ることが怖くなっていますか。
さらに、悪夢が日常生活にどのような影響を与えているかも重要です。仕事や学業に集中できない、家族や友人との関係がぎくしゃくしている、趣味や楽しみに興味が持てなくなった、常に不安や緊張を感じている。
こうした変化が見られる場合、悪夢障害が生活の質を大きく低下させている可能性があります。
ある高校生の例では、試験で失敗する悪夢を繰り返し見るようになり、実際の試験でも不安が強くなって、本来の力を発揮できなくなってしまいました。
また、30代の主婦は、家族に危害が及ぶ夢を見続けるうちに、日中も家族のことが心配で仕方なくなり、過度に保護意識が強くなってしまったといいます。
悪夢障害が起こる背景にあるもの
悪夢障害の原因は、一つではありません。多くの場合、いくつかの要因が重なり合って起こります。
まず、心理的なストレスや不安が大きな要因となります。仕事や人間関係での悩み、将来への不安、過去のつらい体験などが、夜の間に悪夢という形で表れることがあります。
特に、トラウマ的な出来事を経験した後に悪夢が始まることは少なくありません。事故や災害、暴力的な体験、大切な人との別れなど、心に深い傷を残す出来事は、脳が処理しきれずに繰り返し悪夢として再現されることがあります。
これは、脳が経験を整理し、感情を処理しようとする自然な反応でもあるのですが、それがあまりにも強烈だと、悪夢障害へと発展してしまうのです。
また、睡眠の質や生活習慣も関係しています。不規則な睡眠時間、睡眠不足、就寝前のスマートフォンやカフェインの摂取、アルコールの飲用などは、レム睡眠のパターンを乱し、悪夢を見やすくします。
ある会社員の男性は、残業続きで睡眠時間が極端に短くなったころから、悪夢が頻繁に起こるようになったと語っています。
さらに、特定の薬の副作用や、うつ病、不安症、心的外傷後ストレス障害などの精神的な問題も、悪夢障害と関連していることがあります。
悪夢障害の治し方と向き合い方
悪夢障害の改善には、いくつかのアプローチがあります。専門的な治療法として最も効果が認められているのが「イメージリハーサル療法」です。
これは、日中に悪夢の内容を思い出し、その結末を自分でポジティブなものに書き換えて、繰り返しイメージする方法です。
たとえば、追いかけられる夢なら、途中で信頼できる人が助けに来てくれる場面を想像します。この練習を続けることで、実際の夢の内容も変化していくことが研究で示されています。
認知行動療法も有効です。悪夢や睡眠に対する不安な考え方を見直し、より現実的で建設的な考え方に変えていきます。「また悪夢を見たら朝まで眠れない」という考えを、「悪夢を見ても、深呼吸して落ち着けば再び眠れる」といった考えに変えていくのです。
生活習慣の改善も重要な要素です。
具体的には、毎日同じ時間に就寝・起床する規則正しい睡眠リズムを作る、寝室の環境を整える(暗く、静かで、適温に保つ)、就寝2時間前にはスマートフォンやパソコンの使用を控える、カフェインやアルコールを避ける、適度な運動を日中に行う、就寝前にリラックスできる時間を持つ(入浴、読書、瞑想など)といった工夫が効果的です。
ストレス管理も欠かせません。
日記をつけて感情を整理する、信頼できる人に話を聞いてもらう、趣味や楽しみの時間を意識的に作る、マインドフルネスや瞑想を実践する、必要に応じて専門家のカウンセリングを受けるなど、自分に合った方法を見つけることが大切です。
ある女性は、就寝前の10分間、好きな音楽を聴きながら深呼吸をする習慣を始めたところ、悪夢の頻度が明らかに減ったと言います。
また、別の男性は、悪夢の内容をノートに書き出し、カウンセラーと一緒に向き合うことで、根底にあった不安を解消できたそうです。
もし、これらの方法を試しても改善が見られない場合や、日常生活への影響が深刻な場合は、専門医への相談をお勧めします。
睡眠専門医や精神科医、心療内科医は、あなたの状態を詳しく評価し、必要に応じて薬物療法を含めた適切な治療を提案してくれます。
参照元ページ:悪夢障害の判定チェック・症状・原因・治し方
悪夢障害は、決してあなたの弱さではありません。
それは、心と体が何かを伝えようとしているサインかもしれません。その声に耳を傾け、優しく向き合うことで、きっと穏やかな眠りを取り戻せるはずです。
一歩ずつ、焦らずに進んでいきましょう。あなたは一人ではありません。